ハーバード式の絵本の読み聞かせメソッドであるダイアロジックリーディングによって、我が子の思考力などが伸ばせると言われています。この記事の前半では、ダイアロジックリーディングのやり方のポイントを紹介します。そして後半では、幼少期をアメリカで過ごした元帰国子女であるブログ筆者が、ダイアロジックリーディングを日本で我が子に実践して感じたことをお伝えします。
「思考力・読解力・伝える力が伸びる ハーバードで学んだ最高の読み聞かせ」
こちらの本で紹介されているダイアロジックリーディングとは、子どもに絵本を読み聞かせする際、親が一方的に読み上げるのではなく、絵本を元にした質問や相槌といった親子の対話を通じて子どもの思考力や読解力を育てていくメソッドです。著者の加藤暎子氏はハーバードに留学してアメリカと日本の絵本の読み聞かせについて博士論文を書かれています。この本ではご自身でアメリカと日本の違いについて触れながら、ダイアロジックリーディングのメソッドをわかりやすく解説されています。
子どもは質問されることで読解力や思考力が養われ、質問に答えることで伝える力が鍛えられていきます。高額な幼児教室に我が子を通わせなくても、家にある絵本を使って少しの時間から誰でもすぐに始められて、子どもの力を伸ばしてあげられます。アメリカの研究では、ダイアロジックリーディングで読み聞かせをされた子の方が、そうでない子と比べて、言語発達が優れていたことが示されています。
やりとりの流れ
- Prompt 促進 子どもに発言を促す
- Evaluate 評価 相槌や褒めて子の発言を評価する
- Expand 拡張 情報を足す、質問を重ねる、話題を拡げる
- Repeat 繰り返す 理解を促進させるために発言を反復する
こちらの PEER サイクルをページごとに一巡させるのが基本のやりとりになります。
Promprt | 母 | 「何がでてきたかな?」 |
子 | 「さつまいも!」 | |
Evaluate | 母 | 「そうだね、よくさつまいもを見つけられたね。」 |
Expand | 母 | 「さつまいもは何本あるかな?」 |
子 | 「3!」 | |
Repeat | 母 | 「うん、紫色のさつまいもが3本でてきたね。」 |
1ページに一巡など拘る必要はなく、ページごとの対話の量は均一である必要はありません。絵本を読むこと=親とおしゃべりすることとすることが大事です。
問いかけの種類
- 何質問 絵本について5W1Hを問う ex.「これは誰?」
- 何質問に対する答えの拡張 ex.「おじいさんはどこにいるのかな?」
- 子どもの答えが受け入れられたことが伝わるように反復 ex.「そうだね、おじいさんは畑に来たんだね。」
- 「うん」で答えられないような、決まった答えのないやりとり ex. 「この絵について話してみて?」 ※子どもにとっては負荷が高く、考える機会となる
- 文章を完成させるやりとり ex. 親「それでもカブは〜?」→ 子「ぬけません!」 ※何度も読んだ本や繰り返しフレーズのある本が適している
- 読み終わった後などに、ストーリーを思い出させるやりとり ex.「カブはどうやってぬけたのかな?」 ※難易度が高いので4, 5歳以上が目安
- 絵本と現実を結びつけるような、子どもの生活と関連した質問 ex. 「○○ちゃんはカブを食べたことある?」 ※6.同様、高難易度
何よりも大事なことは、子どもが興味を示している絵本でやることです。また、これらのやりとりは絵本の読み聞かせに限らず、子どもの好きな映画や動画を見ている場面でも使えます。
ダイアロジックリーディングの大原則
- 読み聞かせの主導権を少しづつ子どもに譲る
- 発言したくなるよう、子どもの言葉をしっかり受け止める
- +αの情報をさりげなく足していく
- 子どもが楽しむことを大前提に、お勉強の雰囲気を完全に消す
読んでいる本について、子ども自身が語るというのは、2,3歳の子には難しいかもしれませんし、4,5歳でも親のフォローは必要でしょう。それでもダイアロジックリーディングを続けていくことで、子の理解力・表現力を高めていくことに繋がるそうです。
元帰国子女ママが実践するダイアロジックリーディング
ここまで、著書をもとにしたダイアロジックリーディングの要点を紹介しました。ここからは、幼少期をアメリカで過ごし、現在は日本で二人の子を育てているブログ筆者が、ダイアロジックリーディングを実践して感じたことを紹介します。
アメリカと日本のハイブリット教育を受けている元帰国子女の見解
幼少期をアメリカで過ごした私が現在日本で母親となり、我が子にダイアロジックリーディングを実践してみて感じるのは、扱っている言語は日本語でも、このメソッドに従うだけでまるでアメリカにいた頃のようなやりとりになるなということです。
個人的に特に重要だと思うのは、PEERサイクルのうち Evaluate の部分です。一見地味な部分ですが、「よく気づいたね」と、内容がどうであれ子どもが発言したこと自体をまず肯定するというのが、全ての基盤のようにも感じます。
感覚の話になるのですが、日本人同士のやりとりって基本的にこの Evaluate がなくても進められるんですよね。なので、言うことにも言われることにも慣れていないという人が大半ではないでしょうか。
池上彰氏の「いい質問ですね」というフレーズは、まさに Evaluate の代表例でしょう。このフレーズが目立っていたのは、汎用的すぎるため乱発されたということもあると思いますが、おそらく多くの人は何か質問して「いい質問だ」と肯定されてきた経験が少ないからこそ、印象的だったという要因もあるかと推測されます。
子の発言を促してくために「もっと喋って!」と指示するのではなく、まずは「よく気づいたね」と発言したこと自体を肯定することで、親に言われずとも子が自ら考えて発言したくなるというのはとても理に適っていると思います。大人は普段言い慣れていないため、つい言い飛ばしてしまいがちな Evaluate こそ意識して実践できるといいですね。
懐かしの Show & Tell によって身につけられたものはダイアロジックリーディングに通じる
「ハーバードで学んだ最高の読み聞かせ」を読み進めていく中で、Show & Tell が出てきた時には懐かしさに思わず「あー、あったわ!」と声に出してしまいした。Show & Tell とは、アメリカの授業の一環で、子どもが学校にお気に入りの玩具などを持っていき、それをクラス皆の前で紹介するというものです。ちなみに私の記憶では、玩具ではなくペットがテーマのときもありました。
- この玩具はどんなものか
- この玩具のどんなところが好きなのか
- なぜこのおもちゃを選んだのか
このようなことを一通り語った後、当然クラスメイトからバンバン質問されます。「どうやって遊んでるの?」「もっといい玩具を買ってもらえたらどうする?」などなど。扱う題材こそ玩具やペットですが、要はプレゼンの練習です。発表者がメインのようですが、聞いている側が「質問をする」ことの練習にもなっています。
持続可能エネルギーや世界経済といった壮大な課題については語れずとも、小さい子でも自分の大好きな玩具をテーマにすれば、自然とプレゼンのやり方を身につけられるというわけです。学校生活の中では Show & Tell に限らず、「黙って聞きましょう」という場面は本当に限られていて、いつでも発言や質問が促されていました。
私自身は日本人の母親から日本式の絵本の読み聞かせで育てられましたが、アメリカの現地校に通うことで単に英語を習得しただけでなく、自ら考えて自分の言葉で伝えていく教育を受けていたのだなと改めて気付かされました。
よく言われることですが、アメリカ人が生まれながらにして誰でもガンガン自分の意見を言うわけではありません。小さい頃からそうした教育を受けてきたことで身に付いたスキルなのです。逆に言えば、日本人だって学んでいけば得意になるはずです。しかし残念ながら「大人しく先生の言うことを聞く」ことが求められる日本の学校教育ではなかなか伸びません。ダイアロジックリーディングはそれを家庭で補う一助となると思います。高度な知識も高額教材も不要で、確立された手法に則ればどんな親でも子の成長を手助けできるという点は、本当に素晴らしいと思います。
母親が一人でやる場合の注意点
著書の中で、母親と父親では質問の種類に偏りがみられるという報告がされています。そのため、母親と父親の両方が実施することが推奨されています。しかし、読み聞かせはほぼ母親がやっているというケースも多いかと思います。その場合、男女の偏りが出ないように意識しましょう。
具体的には、母親は「何質問」をすることが多く、「決まった答えのないやりとり」と「子どもの生活と関連した質問」が少ないという傾向があるようです。本当に不思議なもので、私も意識しないとつい「何質問」ばかりしてしまいます。
そのため、母親が一人でやる場合は「決まった答えのないやりとり」と「子どもの生活と関連した質問」を多めにするように心がけて実践すると偏りが抑えられると思います。
著書は最高の入門書
今ならAudibleでも聴けますが、最後に改めて著書の紹介をします。
このブログではやり方のポイントをまとめていますが、著書はおすすめの絵本やその本を用いた実例も数多く紹介されており、専門書でありながら平易かつ優しい語り口の非常に読みやすい入門書となっています。ダイアロジックリーディングを始めるにあたっては、是非最初はこの本に目を通してから始めることをお勧めします。
コメント